開幕節が終わった
ホームタウンの変更に伴う新しい本拠地で、そして新しい名前で迎えた我らがサンロッカーズのBプレミア元年。最初のカードはホームTAT(TOYOTA ARENA TOKYO)で千葉ジェッツを迎える豪華なものとなった。開幕戦は金曜開催にもかかわらず来場者9000人。
現地で観戦した開幕戦は開始直後から怒涛のランを重ねるも、千葉のベンチから颯爽と登場した富樫パイセンの理不尽により、最大14点差をひっくり返されてあえなく敗戦となった。この日の富樫は別次元でバスケをしていた。ボールを持てば簡単にズレをクリエイトし、そのズレを利用して続々とスリーを決めていた。ズレてなくても入っていた。マッチアップしたハーパーも山際も決して悪いディフェンスではなかった。単に富樫だけが理の外にいた。
富樫にいいようにやられた一方で、去年の敗戦とは明らかに違う感覚が残った。なにせ、去年はジェッツに4連敗。20点差くらい付けられて心をばっきり折られるような負け方をしていた。しかし今年の開幕カードは負けはしたが5点差。きちんと「殴り合って」負けた感じがした。全員が走っていたし、仕方なく打たされるスリーもほとんどなかったし、なんといっても最後まで誰も心が折れていなかった。確かにジェッツの台所事情は厳しかった。でも「あのジェッツ」と互角にやり合えたのだ。
その「違和感」が現実のものになったのは翌日の第二戦。この日のサンロッカーズはまるで強いチームのような試合運びで勝った。コートサイドで異様な存在感を放つ、新監督ショーン・デニスの悪役としか思えない笑みも相まって、サンロッカーズのこれからに期待せざるを得ない出色の出来だった。
あくまでも個人的な印象だが、去年の勝ちはほとんど「誰々がよかったから」だったように思う。戦術的に勝った試合の記憶があまりない。ホーキンソンが実力を発揮したから、ディディがドンテが田中が良かったから、ウェルシュがいっぱい拾ったから、野﨑が流れを変えたから、ハーパーやベンドラメがエナジーを発揮していたから、のように「個」がファクターとなる勝利が多かったように思う。
サンロッカーズはタレント揃いとよく言われる。特に日本人選手のスターパワーはリーグ随一ではあると思う。それはそれでいい。圧倒的な個はコート上の引力となるからだ。誰かに注目が集まれば、誰かが空く。シンプルな話だ。
しかし去年はそれで勝てなかった。個は局面でのストロングポイントにはなるかもしれないが、必ずしも再現性があるとは言えないからだ。あの最強の個を誇り、実際にシーズンを通してそれを遺憾なく発揮したビクター・ウェンバンヤマですら、今年のNBAファイナルではニックスに敗北した。
今年の開幕節で見たサンロッカーズは、どうやら去年とはちょっと違うように見えた。そういう・・・・勝ち方、そして負け方をしていた。
突然始まる、3人の注目選手紹介
ここでどうしても言及したい選手が3人いる。ホーキンソンについてはあえて触れないが、彼にはとにかく残ってくれてありがとうと言いたい。山崎イブには、来てくれて本当にありがとうと言いたい。ハーパーにはおめでとうと言いたい。
では。
#0 ラウリー・アルキンズ(SF)
アルキンズは当初ロスターには入っておらず、マーカス・ジョージ・ハントという選手がメディカルチェックで落ちて急遽加入が決まった外国籍だ。
アルキンズは去年、B2神戸で開幕から頑張って前半戦を27勝3敗という圧倒的な成績で収めたにもかかわらずシーズン途中で契約解除となったが、その後加入した熊本でも奮起しプレーオフ進出の立役者となった。ものすごい苦労人だ。
とはいえ、ハントに代わってアルキンズが入ると聞いた時、B2の外国籍かー…と思ってしまった。ものすごく失礼な話なのは承知だが、それだけNBA経験者のハントに期待していたので、落差みたいなものを感じたのが正直なところだ。
しかしお披露目となったプレシーズンマッチの熊本戦。アルキンズはゴリゴリにハンドリングするわガンガンペイントアタックするわスリーは決まるわで、その芸達者ぶりにびっくりした。その時は2部の古巣相手だからできたのかな?と思ったが、同じくプレシーズンの茨城戦でも同じクオリティでガンガンやっていた。お腹が空いたと言えば弁当くらいは作ってくれそうな器用さを感じる。(田中もなんでもできるが、弁当は作ってくれなさそう)
器用である一方、「拾われた」という境遇もあるせいか、アルキンズの「自分ができることは全てやり切る」という姿勢と意欲がすごい。これはプレシーズンから開幕節に至るまで一貫している。「人にやる気を見せるとは具体的にどういうことなのか」を、アルキンズは教えてくれる。
#6 山際爽吾(PG)
山際は名門福大大濠高校出身ではあるが、決してエリートではない。そもそも高校時代はライバル校である福岡第一があの河村勇輝が率いる黄金世代だった上、大濠でもベンチでプレイタイムを十分に得られなかった。どうしても試合に出たくて関西の大学に行き、そこで活躍してB3だった岩手ビッグブルズの特別指定選手となった。そして岩手をB2に上げてそこでも活躍し、プロ3年目の今年とうとうトップリーグに上り詰めた。エモすぎんか。
同い年のジャン・ローレンス・ハーパーjr.は福岡第一から大学バスケの王者東海大へ進み、琉球・群馬の特指を経てすんなりトップリーグと契約して新人王まで取ってしまった。そんなハーパーとプロの舞台でチームメイトとなった山際は一体何を思っているだろうか。エモいなあ。
やはり若さもあり、山際は脚がとてもよく動く。個人的には開幕戦で富樫に最も効果的にマッチアップできていたのは山際だと思った。富樫とは10cm以上身長が違うはずなのに、目線の位置がしっかり合っていた。ピックでズレは作られていたが、少なくともスピードで剥がされることはなかったと思う。
山際の目標は日本代表になることらしい。なればいいじゃんと素直に思う。日本代表のPGはライバルがめちゃくちゃ多いが、岩手で見せていたクリエイティビティをサンロッカーズでも発揮できれば、少なくとも近々に合宿には呼ばれるのでは。そのためにも、Bプレミアの舞台でももう少しエゴを出してほしい。少なくとも試合に出てる時間はジェッツの瀬川や宇都宮の小川のように、「このチームは俺のチーム」と思い込んでほしい。きっとそれはいつしか思い込みではなくなるから。
#14 狩野富成(C)
狩野には昨シーズンそれなりにガッカリさせられてきた。イージーなシュートを外す、ダンクをリングに当てて宇宙に飛ばす、合わせをファンブルする、突っかけられて簡単にファウルを取られる、トップに吊り出されてインサイドがガラ空きになるなどなど。しかし、10試合に1試合ほど見違えるような動きを見せるので、どうしても「コイツはダメだ」とは思えず、ましてや他のチームに取られてそこで覚醒しようものならもう悔しすぎてBリーグ見るのをやめてしまうかもしれない、というくらいには期待をしている。
また身長が伸びたのか、今期の登録は210cm。ホーキンソンよりデカい。これほどの日本人ビッグマンは貴重なので、アジア大会の代表(通称B代表)にも呼ばれて佐賀に行ったり愛知に行ったりと、忙しい夏を過ごしていた。
そのアジア大会の決勝の韓国戦、狩野は明らかに効いていた。アレックス・カークよりも断然よかった。サイズの利を活かして韓国の選手にゴール下で負けなかったし、強気にリングにアタックしたら何かは起きた。(おそらく)苦手だったボックスアウトもきちんとできていた!試合こそ負けはしたが、「そのデカい体はそのためにあるんだっ!!」とテレビに向かって思わず言ってしまうくらいに興奮した。韓国代表相手にこれだけできたら、ゴール下で敵う(帰化以外の)日本人はほとんどいないのではと思う。故にマッチアップ相手は外国籍になるのだが…もうとにかく頑張ってくれとしか言えない。はよ覚醒しろ。
ちなみに、210cmにしては脚がかなり速い。ホーキンソンも速いが、狩野の方がもっと速い。もちろんジャンプ力もある。去年までいたトロイ・マーフィーjr.のように、勇気を出してもうちょっと運動能力を活かしたプレイもやってみたらいいのにと思う。
今シーズンの東京サンロッカーズに期待すること
チームとしては今シーズンの目標は「CS出場」とのことらしい。しかし、新監督のショーン・デニスは僕が知る限りひとっこともCS出場が目標と言っていない。もちろん目指すのは勝ちだが、ショーンはその勝ちを得るための土台作り目標としている。
いくつかのインタビューを見たが、ショーン・デニスは今シーズンの第一の目標として「アイデンティティとカルチャーの確立」を軸として掲げている。そしてその戦術面のテーマとして「ハイテンポなオフェンスを牽引する、破壊力のあるディフェンス」を標榜してチームを作っている。
昨シーズンサンロッカーズにいた山内盛久(今季は琉球に移籍)は、いろいろなインタビューでこのアイデンティティとカルチャーの欠落について言及していた。
なにしろ2シーズン連続の更迭があり、ヘッドコーチが1年で3人変わったのだ。しかも最初の1人は圧倒的なカリスマを誇る世界的な名将だ。そんな人がクビになるような状況でチームのアイデンティティもへったくれもない(最後のゾラン・マルティッチはかなり上手くやっていたが)。そうした状況下で、山内が古巣をなんとかすべくあれこれ苦心して、チームがチームとしてなんとかまとまっていたように見えた。
そんな山内はもういない。しかし、入れ替わりでやってきたショーン・デニスもまた同じところに問題意識を持ち、今度はじっくりとイズムを注入しようとしている。この点において、僕はショーン・デニスをかなり信用している。
ショーンは前職名古屋D時代のインタビューの中で、「CSって言えばいいってもんじゃない、現状を正しく認識してできることからしっかりやるんだ」という趣旨の発言をしている。ショーン・デニスとはそういう指導者なのだ。
さっき「再現性」の話を書いた。勝つための再現性を得るには、「自分たちはどういうチームなのか」という共通認識がチームに備わる必要があると思う。そして強いチームはその共通認識が敵味方選手観客問わず、リーグ全体で共有されているように思う。こういうのは「こうでーす!」と言えば共有されるものでもない。時間をかけてじっくりと浸潤していくものだ。宇都宮はどういうチームですか、アルバルクはどういうチームですか、群馬はどういうチームですか、琉球はどういうチームですか。そのような問いに対してBリーグのファンはどこのチームのブースターであれ、大まかなイメージを共有している。
「自分たちはどういうチームなのか」がわかって初めて、チームのコアなる戦い方が確立でき、それが通用しない場合の例外的なオプションを取れるのではないだろうか。バスケットボールに限らず、他のスポーツやひいてはビジネスに至るまであらゆる強いチームは必ずそこを固める努力をしている。
ベンチ裏のエリアに座っていた開幕戦のスタンドにおいて、一点とても印象に残ったことがある。
サンロッカーズ劣勢の中、ジェッツがエンドからボールを入れて、ボールに触らずに転がしながら時間を進めていた。これ自体は24秒バイオレーション回避のためにガードがよくやる常套手段だ。
ジェッツがボールをコロコロ転がしているのを見たショーン・デニスがものすごい形相で「行けよ!!なんでそのボールに詰めないんだ!!!」というような檄を(確か山際に)飛ばしていた。この様子を見て、ショーン・デニスが作りたいチームは多分そういうチームなんだろうなと思った。
試合開始前に流れた、セガサミーが本気を出して作ったチーム紹介映像はすごくカッコよかった。ロゴをはじめとして紫を基調としたクリエイティブやアメニティもまた大体がシュッとしている。ソニック・ザ・ヘッジホッグが会場のスクリーンをオシャレに駆け巡り、土地柄もあってチアダンスチームのクオリティもリーグ随一だ。
そんなクールなガワがありつつ、中身に相当するアイデンティティにはとんでもない泥臭さがあるとしたら、それはもうめちゃくちゃカッコいいのではないだろうか。そういうチームだったら、きっと負け続けても応援できるし、きっと居候先のアルバルクと双璧をなしても全く引けを取らない、首都のチームとして君臨できるはずだ。
開幕節のサンロッカーズは果敢にペイントアタックし、オフェンスリバウンドやファウルドローの数がものすごく多かった。これは明らかにいいチームの兆候だ。攻めている。走っている。ここからアイデンティティを徐々に形成することでそこに再現性を持たせ、シーズンが終わる頃には「サンロッカーズってこういうバスケをするチームなんだよ」と言わせられるようなチームになってほしい。いきなり優勝とかCSとか言わないので、いちブースターとしてそこを強く願っている。
あ、フリースローは改善してね!
출처: note 원문
번역: Gemma 3(.44) 초벌 + 교정 검수
원문 보기 | 출처: note.com