仕事帰り、雨はまだ細く降り続いていた 薬局を出て、駅へ向かう途中 俺はコンビニの軒先で足を止めた「……ん?」 視界の端に、ガチャガチャが並んでいる 普段なら、そのまま通り過ぎる けれど 一台だけ、妙に丸いものが目に入った『くまさんのめじるしアクセサリー』 傘の柄につけられる、小さな飾りらしい 白いくま 茶色いくま 眠そうなくま どれも、少し間の抜けた顔をしている「……好きそうだな」 思い浮かんだのは、彼女だった こういうものを見つけると、たぶん目を輝かせる『見て。かわいい』 そんな声まで簡単に想像できた 自分の右手を見る 黒い傘 左手には、今朝彼女が置いていった淡い色の傘 夕方になって雨が強くなったから、帰りに迎えに行くつもりで持ってきた「……」 もう一度、くまを見る 俺は財布を取り出した「一回だけな」 誰に言うでもなく呟いて、硬貨を入れる ハンドルを回す ごとん カプセルの中に入っていたのは、小さな白いくまだった「……当たりか」 口元が少し緩む カプセルを開け、その場で彼女の傘につけてみる 透明な輪にぶら下がった白いくまが、持ち手のところで揺れた 思ったより似合う たぶん気づく 気づいたら、きっと笑う「好きそうだったから」 聞かれたら、それだけ言えばいい 別に大したことじゃない 偶然見つけて なんとなく回した それだけだ 俺は歩き出そうとした でも 一歩進んで、止まる 左手の傘 白いくま 右手の自分の傘 何もついていない「……」 もう一度、ガチャガチャを見る いや 必要ないだろ 俺がくまをつけてどうする そう思う 思うのに 二本の傘を並べて見た時 片方だけに揺れている小さなくまが、妙に気になった「……お揃い」 言葉にすると、少し恥ずかしい 三十九にもなって ガチャガチャを二回も回して 傘にくまをつけて 我ながら、何をしているんだと思う でも 彼女が見つけたら『あなたのもあるんだね』 そう言って、たぶん嬉しそうに笑う そんな顔を想像した瞬間「……もう一回だけ」 俺はガチャガチャの前へ戻った 硬貨を入れる 回す ごとん 出てきたのは、濃い灰色のくまだった 白いものとは少し違う でも、同じ形「……悪くないな」 自分の黒い傘へつける 二本を並べる 白いくま 灰色のくま まったく同じじゃない でも、ちゃんと同じ仲間だと分かる 風が吹いた 二匹が揺れて、軽くぶつかる その小さな音に なぜか胸の奥が、少しだけ温かくなった 最初の一回は 彼女が喜ぶと思ったから 二回目は ――たぶん「俺も、欲しかったんだな」 二人のものだと分かる何かが 高価なものじゃなくていい 特別な約束じゃなくてもいい 雨の日に並んだ時だけ気づくくらいの、小さな印 それくらいなら 欲しがってもいい気がした スマートフォンを見る 彼女からメッセージが届いていた『もうすぐ終わるよ。雨すごいね』 俺は短く返す『そこで待ってて』 送信して 二本の傘を持ち直した 歩くたび 白いくまと灰色のくまが揺れる 近づいて 離れて また、ぶつかる「……気づくかな」 気づいてほしい でも、自分から教えるのは少し悔しい そんなことを考えている自分に、小さく笑った 雨の向こう 彼女が待っている 今日はきっと 傘を渡す時、いつもより少しだけ照れる「……迎えに行くか」 二匹のくまを連れて 雨の街へ歩き出した
こちらに参加させていただきました★
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번역: Gemma 3(.44) 초벌 + 교정 검수
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